東京都内の耐震診断結果の公表(平成30年3月29日)
東京都より、耐震診断促進法に基づく、耐震診断が義務付けられている建築物の耐震診断結果が公表されました。
耐震診断促進法で規程した報告期限は平成27年末で、他の都道府県では平成28年末から平成29年上半期に公表が集中していましたので、公表によるダメージを避けるための諸々の調整に時間を要した上での遅い公表となったことが推察されます。
東京都所管の23区分だけでもpdfで100枚程度ありますが、興味のある方はご覧ください。
規模等により市や区が所管するものについては、市区ごとの公表となります(以下にリンクあり)。
対象となっているのは、昭和56年5月31日以前の旧耐震基準で建築された建築物で、
・一定規模以上の不特定多数が利用する「要緊急安全確認大規模建築物」
・特定緊急輸送道路の沿道に位置する「要安全確認計画記載建築物」
です。また、これらについては、
Ⅰ 大規模の地震の振動・衝撃に対して倒壊・崩壊する危険性が高い
Ⅱ 〃 危険性がある
Ⅲ 〃 危険性が低い
との三段階での判定となります。
現に建替えを含めた耐震化工事中の場合、また、近々に耐震化工事の予定がある場合は、その旨が記載されます。
新聞報道にもありますが、繁華街の著名な商業ビルのいくつかで、危険性が高い、又はある、との判定結果となっており、かつ、耐震化の目途が立っていない状況です。
(新宿紀伊国屋、新宿スバルビル、銀座コアビル、上野ABAB、中野ブロードウェイ、六本木ロアビル、等。なお、渋谷109については、耐震性不足の結果ですが、現在、耐震化工事の設計中とのこと。)
利用の状況や所有形態(区分所有)によっては耐震化が容易ではない事情もうかがわれるところですが、この公表を機会に、耐震化に尽力していただきたいと思います。
一方、「危険性が低い」という判定となった建物も多数あります。割合的には、こちらの方が多数です。
「旧耐震だから危ない」とは一概に言えないことが分かります。
古いマンションの深刻な耐震性不足が明らかに
特定緊急輸送道路の沿道建築物については、用途と無関係に耐震診断義務が課せられますので、古い共同住宅(分譲マンション)の結果も含まれています。
東京都所管と区が公表しているものを合わせると、今回、多くの棟数の耐震診断結果が公表されましたが、かなりの数(半数かそれ以上の割合という印象です。)の共同住宅で耐震性不足の結果が出ております。
中でも、「危険性が高い」という判定が多いことも、目を引きます。
これを、耐震診断義務のない一般の共同住宅に置き換えて考えると、日本社会全体の深刻な問題が、改めて浮かび上がってきます。
沿道建築物については、耐震化についても一定の助成があり、もちろん困難ではありますが、耐震化補強の道筋があります。
しかし、診断義務の対象外である一般のマンションは、同じ程度の割合で耐震性不足が予想されるものの、沿道建築物のような助成は乏しく、また、住民の危機意識も高いとは言えません。